千早茜「魚神」

魚神 (集英社文庫)
  かつて遊郭が栄えたものの、いまや時代の進化から取り残され、
  デンキすらない停滞した時間が流れるその島に、
  親を知らないふたりの美しい姉弟がいた。
  姉を白亜、弟をスケキヨという。
  お互いを強く想いかけがえない存在だと信じながらも、
  とある過ちのためにお互いから離れてゆくが、その縁は、
  到底無くせるものでは無かった…。
  
  


 いつの時代ともしれない、どこともしれない、
 そんな場所で起こる、夢のように幻想的で、地獄のように凄惨でもある物語。

 時代も場所もあやふやで、生きる人々すらもどこかふんわりとしていて、
 ただひたすら、白亜とスケキヨの互いを想う気持ちの強さだけが逞しく感じられます。
 
 求めすぎるからこそ、近づけない。拒否をされたらと思うと、踏み出せない。
 そのジレンマがじりじりと切なく焦げ付いていき、
 やがて怖ろしい事態が招かれていく。

 その、怖ろしいのに美しい、事件。
 たちのぼる炎の揺らめきのような、圧倒される力を感じさせられながらも
 惹きつけられてやまない、という。うっとりとした酩酊感を感じました。

 伝説や台詞の言い回し、物事のひとつひとつの描写が、
 さまざまなイマジネーションをかきたてる感じで、ほんと、惹き句ではありませんが、
 デビュー作とは思えない巧緻さを感じました。
 しかも好みです。素敵。

 そして今まで他の作者の作品でも感じていた、独特の色気を感じさせる文章がまたよく
 この作品世界にマッチしていて、盛りたてているように思いました。
 中盤の白亜と蓮沼のあたりのエピソードはとりわけそういう意味でぞくぞくしました。
 こういう関係も、エロティックでサディスティックで、良いものですね(超個人的に)。


 …

 一言で言えば退廃的で、ぬるま湯に浸かっているような世界の、
 狂おしい思いが炸裂したひとときをえがいた、大人の御伽噺、とでもいうんでしょうか。
 しあわせになりました、という結末だとはいえないラストシーンの余韻が
 後を引きます。とろり、とその沼の感触を感じたままなようで。

 素敵な物語でした。 


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ナイロン100℃「黒い十人の女」をCSで鑑賞。

先日、CSで放映されてたナイロン100℃版「黒い十人の女」を観ました。

ひとりの浮気性の男と、彼を取り巻く十人の愛人たち。
憎みあう存在のはずの彼女たちは、
けれどやがてその男を殺す算段を始めてゆく。

そうして繰り広げられる、女のありとあらゆる「女らしさ」を散りばめた物語でした。

嫉妬に憎悪、非情と愛情、そして冷酷。
おそろしいけれど、いとおしい。
そんな女たちのめくるめく生々しい生き方が、とても鮮烈に描かれていました。
ほんと、こわい女たちでした。
けれど、憎めません。

その瞬間瞬間に真剣に生きている姿がとても凛々しく見えましたし、
もっと単純な言葉でいえば、カッコ良かったからです。

あんな結末を招いてもなお、それぞれがそれぞれであることを
崩していなかった強さが、なんとも眩しいなあと感じたのでした。

また、
原作の映画の年代にあわせたレトロモダンな服装が観ていてかわいらしいし、
円形の舞台を生かしたシンプルに徹した舞台道具の活かし方のセンスは
さすがのナイロン、って感じで素敵でした。
こういうさりげないセンスがいつもナイロンはぬきんでてると感じます。

これはナマで観たかったなあ…!!
惜しいことをしました。でも映像でも見れる機会があって良かった…!
面白かったです!


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「90ミニッツ」

シアタードラマシティにて、三谷幸喜氏作の「90ミニッツ」を観に行ってきました。

西村雅彦・近藤芳正両氏の二人芝居です。
どちらも円熟味増したイイ味を持っておられる役者さん。期待値高めで楽しみにしてました。

さて供される舞台には、テーブルと椅子が一脚と、
それらに向かい合う形で簡易椅子が並べられてあるだけ。
白いカーテンで区切られた四角い舞台上で、医者と患者となった子供の父親、
その二人のドラマが幕を開けます。

交通事故で子供が重傷を負い、手術の必要がある。
けれど、その手術さえ行えば、完治は容易に可能な状態。
なのに、父親は手術を拒む。正確には、そのための輸血を拒む。
彼の地域では動物を含む他者の血肉を取り入れることは禁忌だったからだ。

到底受け入れられない医者は説得を試みる。
けれど父親は聞き入れない。

刻一刻と子供の症状は悪化していく。死に向かってゆく。

それでも父親は拒む。医者は言い募る。

対立はやがて、自己のエゴとエゴのぶつかりあいに変化してゆく……


……あれか、と思い当たる人はきっと多いでしょう、
このお話のモチーフはあまりにも有名ですから。
けれどもそれはそれとして、この架空のお話として、
承諾書にサインをさせようとする医者とそれを拒み続ける父親の対立、
ただそれだけの会話劇を、90分間ものあいだ、緊張感をはらみつづけながら
見せきったのはさすがに凄いと思いました。

役者の妙、脚本の妙、そして流れ続ける水の妙。
それがきっちりと絡み合った作品だと思います。

…起こるドラマそのものはシンプルですが、
そこへ沸き起こる人間の感情はさまざま。

親子の愛情は自己の保身へいつのまにか姿を変え、
医者の使命感もまた保身の別の姿だったことがさらけ出されます。

ひとつの命が消えようとしているのに、なんて醜いんだろう。
若干のいらつきを感じないではいられなかったですが、
それこそが人間らしさ、であるような気もしました。

命は尊いとだれもがいいだれもが信じていながらも、
自分自身が絡むとそれがないがしろにされてしまう。

それもまた、人間のひとつの側面なのだろうなと。
もちろんそう言っちゃってる自分だって人のことは言えやしませんが。

最後の最後の展開は、はたして救いだったんでしょうか。
あの結果はもちろんほっとする気持ちが大きいものですが、
けれど父親が「死んでも…」と口にした最後の言葉が嫌な余韻を感じてたまりませんでした。

あの形はあの形で、父になりきれなかったという咎を
背負ってしまったのですから。
逆もまたしかりで、それは父が医者に代わるだけで。

そう、考えてしまうと、ずるずると泥沼に沈むような感覚を覚えたのでした。


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金沢旅行・その2

金沢旅行その2〜


雪深い、湯湧の宿ではカニ三昧フルコースをいただきました。
こんな感じの。

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……贅沢しました。
いうまでもなく、美味でした。
かに味噌が特に、絶品でした。香ばしい殻の焼ける香りと、
かに味噌のコクのある風味が相乗効果で抜群のうまみをかもし出してました。

そんな感じにお腹と心も満たされて
一晩を過ごして、お宿を出立いたしました。

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雪のしん、とした空気がとても清清しかったです。
寒かったですけどね…!

・・・
そしてバスで金沢市内に再び下っていきます。
みるみる雪はなくなってゆきますが、最初に向かった兼六園ではまだ
雪の風情が楽しめるほどには残ってました。

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一番有名な徽軫灯籠です。
まだ10時過ぎくらいだったと思うのですが、すでにわんさか人がいて、
記念写真は行列しないと撮れませんでした。みんな早いのね。
というわけでこういう角度です。
片足が短いのが、単純に事故で折れちゃっただけ、といういわれを知って
どことなく残念な気分になったのは私だけなのかしら…

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それにしても、

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ほんとまるで、水墨画の世界のようだ、と思います。

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白の静謐さは、日本の庭園にこそよく映える、と思いました。


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ただ、こういう木から溶け出した雪のしずくが頭上に襲い掛かってくるので、
その情緒に浸る余裕が正直、あまり無かったですが…!

まあでも、


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ほぼたった二つの色合いのみでも、庭園の造形は見るべきものがたくさんあるな、
と感心しました。
むずかしい意匠はわからなくとも。


そして移動しまして、すぐおとなりの金沢城公園へ。

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広大な敷地はほぼ公園となっていて、ぐるりを取り囲む城壁やほんの一部の建物があるくらいで、
見るものというのはそれほどなく、ちょっともったいなさを感じました。
けれど新しく城なり資料館なりを建てられても、それはそれでふさわしいとも言い切れないとも
思いますから、難しいところですかね。
新しく建てても、どうしても歴史を経て残っている建物が持っている重厚さには
勝てないですからね…。

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まだ綺麗に積もってまして、あちこちに雪だるまがありました。


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かつてのお殿様たちが見ていた景色です。眺望抜群です。

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やはり雪のつくりあげるコントラストは絶妙だなあと感心しきり。
お堀の水は上面だけでしょうけど、凍ってます。


・・・
そしてあと訪れたのは、ひがし茶屋街。

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石畳、建物そのもの、雰囲気は御茶屋の持つ独特のもので良いですが、
けっこうもう定番観光地っぽい感じなので、とくに昼だと、ちょっとにぎやかだなあと
思ったりしました。自分もそのひとりなわけですけどねー。

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そしてなぜか金箔の蔵がありました。

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まぶしいです。



後はお土産やさんをうろついて、
金沢をあとにしました。

お土産は和菓子はやっぱりはずせませんね!!
中田屋のきんつば、俵屋のあめ、これは私の定番です。
(<人にお願いするときの、そして今回も買いました)
あとお麩が手軽なお土産として使えそう〜と思いました。ちょっと変わった感じで。



そんな感じの一泊二日、金沢満喫カニ満腹旅行でしたー
あとまた行く機会があったら忍者寺に行きたいです!

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金沢旅行・その1

1月はじめの三連休に、金沢旅行へ行ってきました。


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曇り空なのでやたら暗いですが。
好評…ばかりではないらしい、おもてなしドームです。

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そしてつづいて出迎える「鼓門」です。
すごーく大きく迫力があります。
けれどなぜに駅前に?

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それからついでにやかんが埋まってます。
なぜに駅前に?

…と疑問を持ちつつ最初に向かったのは近江町市場でした。
お昼ごはんを食べに回転寿司へ!

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唯一写真に撮った、ボタン海老です。
のどぐろとかがすえびとかご当地物を撮るべきだったのではと思いつつ美味しかったので良し。
こちらに限らず、なんでもお魚は肉厚で新鮮で、美味〜でした!!
ただ、価格もそれなりにかかりましたけどね。

そして腹ごなし?に向かったのは21世紀美術館〜

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雪が薄く積もる外にも、モニュメントがいろいろとあって面白い作りです。
ベンチはヘモグロビンみたいでかわいい…

そしてなぜか建物の全景を撮った写真がありません。謎。

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こちらは有名なプールですね。
地上と水面とのコンタクトがちょっと楽しい。

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地下からの入り口の写真。なんとなく趣があります。綺麗な色。

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これも美術作品のひとつ。四角く切り抜かれているのはリアルな空の様子です。
ただ、曇天。
…青空ならとても綺麗に映えたと思います。

この美術館にはずっと行きたかったので念願叶ったという感じでした。
部屋そのものを使ったギミックや、映像を使った仕掛けなど、
想像力あふれすぎる、深く考えなくてもなんだか面白いと感じられる作品たちが多くて、
とても楽しめました。
意図を読み解いていけばもっと楽しめるものなのでしょうが、
軽く触れてみたりするだけで、芸術って楽しいものかもしれない、と思わせてくれる、
そういうきっかけをあたえてくれる場所として、素晴らしいコンセプトを持った美術館だと
感じました!



そしてこちらを出たあとは、金沢名物小雨(雪混じり)を浴びながら、
尾山神社へてくてくと。

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晴れていたら…もっとステンドグラスが映えていたでしょうに、残念でした。
境内は大きくはありませんが、正月明けまもなくということで、おみくじもまだにぎわってました。


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そしてまたてくてくと…あるいて、長町武家屋敷跡あたりをうろうろしました。
足軽資料館を見て身分格差を感じたり。和菓子屋さんを冷やかしたり。
ゆるゆるとした良い時間が流れていました。

そのあとは駅へ戻って、宿泊先へ向かいました。
止まったのは湯湧温泉にあるお宿です。

金沢市内は雪は薄く積もる程度で、歩くのになんの苦労もしないくらいでしたが、
湯湧に近づくにつれ、たった30分でそこは雪国に。
歩道が何十センチという雪で埋まってて車道を歩くしかありませんでした。
そしてその車道には凍結防止のため融雪装置(スプリンクラー)が常時稼動。
…慣れない大阪人、存分に浴びてきました(ブーツに)。

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宿の窓からの景色。完全に雪国です。
これはこれで情緒があって良いです。

そして次の日に兼六園と金沢城、ひがし茶屋街へいきました。
その2につづきます〜


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自分のこと

kogawa

Author:kogawa
 ☆読書と観劇を愛しふらふら出歩くのも
 好みます。雑念の多い人間です。

 ☆観劇予定(希望込)…
「THE BEE」
「ウエルカムニッポン」
「ベルが鳴る前に」
「持ち主、登場」
 ★写真は一眼レフやスマホや
コンパクトデジカメが混じってます。
こだわりなくてごめんなさい。

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