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芝居や本などで楽しくさまよう日々の記録。

読書

角田光代「三面記事小説」


本当にあった事件から着想を得て描かれた小説が収められた短編集です。ほんのわずかな顛末しか読み手には知らされていないので、調べてみない限り実際がどうだったかはわかりませんが、その着想の広げ方は凄いと感じるものばかりでした。

この結果が、そのような過程を経たものだとは、という意外性をたのしみ、そして時折残酷で悲劇的なストーリーに「もしかしたら事実かもしれない」(実際は違うとは理解しつつも)と空想してはらはらと胸を苦しくさせられました。実際にあった、ということが頭の片隅に残っているからか、リアリティをずっしりと感じもしました。

どれもが、どこか救いがないものばかりだったので、読み心地としてはけっして楽しい、とはいえません。けれど、現実と寄り添っている向こうがわを覗いてしまったような、自分もどこかでこのように道を外してしまうかもしれないというような、そんな心地にさせられる地続きの物語で、強くあとを引く感覚を読み終えてなお残されたのでした。

最後の一編は、本当の事件のほうの顛末を知ってましたし、、この悲惨さはもしかしたら自分の身にも起こるかもしれない未来だと思えてしまったので、ひたすら恐ろしくも哀しくてたまりませんでした。

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現在読書中:「どこかでベートーヴェン」もう終盤ですが。事件よりも高校生同士の嫉妬や劣等感のないまぜになったやり取りがツラいな…
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読書

北村薫「太宰治の辞書」


年齢を重ねた「私」は編集者となり、そして、一児の母ともなっていた。

変わらぬ本への愛をはぐくみつづける日々を送りつつ、、むかしの本の謎を「私」は追ってゆくことになる。長い付き合いをつづける友達、そして円紫さんと他愛もなくもかけがえのないやりとりをつづけながら・・・

…まさかのシリーズ新刊というのが本当の気持ちで、読んでいくうちにああこういうトーンだった、という懐かしさが湧き上がってきて、じんわりと本の世界に浸りきっていました。

本のなかの見過ごしてしまいそうな他愛ない描写を拾い上げ、そのほのかな輝きに魅せられて、思索をつづけてゆく。「私」のおだやかな、けれど芯の通った考え方の流れるさまに、読むほうも心地よくたゆたうような気分にさせられます。

大きな驚きではなく、小さな納得を得られる、腑に落ちる、という感覚の展開なのですが、この雰囲気にまた寄り添うことができた嬉しさでいっぱいになれたという意味で、とても素敵な時間を過ごせたと思えたのでした。

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読書

はらだみずき「ぼくの最高の日」


老バーテンダーがひとり営む地下のバー「ピノッキオ」につどう人々のエピソードを描いた連作短編集。

表題作は人生最高の日の話を知ればその人を知ると唆された女性が、別れた恋人にその問いを投げかけるお話ですが、胸苦しくなるような切なさとまぶしさのあるエピソードがとても印象的でした。

そういう運命の不思議や一筋縄ではいかないところがあるのが、人生の面白さと悲しさなんでしょう。

そしてその感情の混沌を、このバーがすっと鎮めてくれる。そんな居心地の良い雰囲気を物語から、感じたのでした。

もうひとつ気に入ったのは、切り取られていたアルバムの話。これもまたなんとも切なくて甘酸っぱい青春のひとときでした。素敵だなあ。しみじみ良いなあ・・・


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※現在読書中・・・「サブマリン」安定しておもしろいなあ。

読書

中脇初枝「みなそこ」


四国の郷里へ娘とともに里帰りしたさわは、親が家を売りその郷を出ることを知る。去来するさまざまな思い出とともに、惹かれてやまない少年とのひとときを描いた物語、です。

繰り返し描かれる少年とのほのかな、そして同時にどこか扇情的な恋情に揺らめかされながら、かけがえのないふるさとでの思い出のひとつひとつに、主人公とともに寄り添うように読めたお話でした。

故郷で過ごすうち、忘れていた記憶、忘れたふりをしていた記憶が混ざり合いよみがえっていく。それはとても大切なものであるときもあれば、傷ついた自分を思い出すこともある。けれど、どちらにしても、今の自分を構成する大事なかけらたちだったのは間違いのないこと。その危ういきらきらしたものたちをひとつひとつすくいあげたような、物語です。

少年との恋愛…といっていいのかわかりませんが、これはいったいどこまでどう本気なのか仄めかせているだけなのかと思っていたら、わりとそうだったのかという展開になっていき、いやいやそこまでどうしてのめりこむの?という理由については、少しわからないなと思うところがありました。年齢差がいかんせん…まあ、だからこそのあやうさが魅力的でもありましたが。正直言って私は嫌いではないというかドキドキしましたが。

橋のシーンはとてもきれいで切なくて、かつ、ひどく残酷な場面でしたね。

正直、ラストの主人公がいたった境地(そもそも彼女はいろいろ悟り過ぎでは…)がいまいちわかりかねましたが、あたたかなようで裏もある人々とのひとときを淡々としているようで実はねっとりと描いている、そんななかなか一筋縄ではいかない話だな、と思いました。

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※「るつぼ」のチケットゲット。じっとりと重厚感ある感じの物語ぽくて期待だ。来年の新感線の芝居はどうしようか。ノダマップと併せて組むかあ・・・行きにくいところにある劇場ですね、新しい劇場…。

読書

はらだみずき「波に乗る」


新卒で入った会社を一月で辞めた文哉のもとに、見知らぬ男から父が亡くなったという知らせが突然届く。

数年疎遠にしていた父は、知らぬ土地で一人暮らしていた。その土地で父がどのように生きていたのか…、文哉は次第にその足跡をたどってゆくことに…。

父を亡くしたどこかドライな兄妹が、身辺整理を進めるうちに、父が見つけていた「子の巣立ったあとの人生」に触れていく。そうしてだんだんと、自らの生きがいをも取り戻していく。

そのひとつひとつのささやかな人とのふれあい、エピソードの積み重ねが丁寧で、それでいて過剰でなく自然に心温まるようなニュアンスなので、いきいきした海辺の光景とともにゆったりとお話へ引き込まれていきました。

つまらない人生、となげく人は多くても、それをどうにかしてやろう、と生きている人は本当に少ない。そして面白くしてやろうと生きたひとの人生は、惹きつけられるほどに魅力的なもの。それを自然と証明してくれる、周りの人々の暖かさが素敵でした。

ようやく一歩を踏み出そうとしている文哉が、ようやっと観ることのできた父と同じ風景。その静かでゆたかな風景は、あえて写真に撮って額縁に飾らずとも、彼の「面白い人生のはじまり」として彼のなかにずっと残り続けるんだろうな、と思えたのでした。

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※オリンピックにかまけてぜんぜん読書が進まない昨今。そして寝不足…
自分のこと

hito1124

Author:hito1124
 ☆読書と観劇を愛しております。
 ☆読書感想はブクログと連携始めました。
 ☆おでかけとかは別ブログでまったり更新中。
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 ☆観劇予定(希望込)…
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