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芝居や本などで楽しくさまよう日々の記録。

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日々つれづれ

梨木香歩「海うそ」

著者 : 梨木香歩
岩波書店
発売日 : 2014-04-10

五十年の昔、南九州にある「遅島」の調査へ訪れた研究者。身近な者の喪失による心の虚ろを抱える彼は、島に伝わる修験道や歴史を知るうちに、共鳴を受けつつ調査に没頭してゆく。

…その架空の島「遅島」の風土や宗教についてを紐解いていく、フィールドワークをともに見てゆく、というのが物語の大部分を占めます。というとどこか堅苦しいようですし、実際、物語的なスペクタクルがあるわけではありませんので多分、万人向けの物語ではないのでしょう。

けれど、他にはない驚きとたくらみに満ちた物語として、稀有だとも感じました。

それは、本を読み進めていくうちに、島のかつてあったモノたちと、それらにまとわりつく人々の信念、祈りといったものが架空の存在ながら徐々にその姿を取り戻してゆくのをまざまざと感じ取ったからです。

形のないそれら、文字でつづられただけのそれらが、とても生々しく浮き上がってくるという感覚は、物語は数あれど、なかなか得られるものではありません。「ものがたり」とは、まったくの「無」からこんなにも豊かに紡げるものなのか、と感嘆も覚えました。作者のイマジネーションの豊かさ、そして動植物などの知識の深さの凄さをいまさらながらに思い知ったのでした。

「喪失とは、自分の中に降り積もった時間が増えること」といった台詞は、ほんとうに真実を貫いたもののように感じてはっとさせられました。

時間の経過とともに失われてしまうものには憤りと悲しみを感じえません。希少な、再生が見込めないものがあまりにも多すぎるからです。けれどそれを自らに取り込むことによって、次の世代になにがしかを伝えることはできるかもしれない。そしてその次の世代にも。姿、形は変わっても、その本質は、もしかしたら変わらずに。

悲壮さのある展開ながら、そういったかすかながらも確かな希望を感じることができたので、どこかほっとして読み終えることができました。


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*法医昆虫学第4弾、「メビウスの守護者」を読書中。相変わらずテンポよく虫虫しててイキイキしていますね。素敵。
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hito1124

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