投稿日:2008-03-20 Thu

いわゆる「白乙一」も「黒乙一」も好きでした。
白のほとんどで泣き、黒のほとんども楽しみ、
一番二番のお気に入りの作者さんでした。
そして、この本が久方振りに再会できた乙一作品、です。
そのかつての白黒のよさが両方出ていてとっても楽しめました。
そんでなんだか懐かしかったです。
そう、こんなひねくれた感じだったなあ、と。
舞台は架空のヨーロッパ風のとある国。
世の中は「怪盗ゴディバ」と「探偵ロイズ」の話題で持ちきりだった。
世の名だたる名品を颯爽とさらっていく怪盗と、彼を追う難事件を解決しつづけた探偵。
少年リンツもその話題に心を奪われ探偵に憧れていたが、
とある日、病で死んだ父親がかつて買ってくれた聖書に挟まっている地図を発見する。
その地図と怪盗との接点を発見したことから、少年の運命が翻弄される……。
と、某ルパンとかそのあたりを思わせる出だしなのですが、
……、
……以下つづきから。ネタバレ全開ですよ。
ところがどっこい。
なんて死語?を使ってしまうほどの中盤からの急展開。
探偵が悪者に。
怪盗が正義に。
そして不良少年が探偵に……。
かつてこんな口の悪い探偵役がいただろうかってくらいのとんでもない不良探偵ぶりには、もう笑っていいのかなんなのか。こんな普通とはちょっとズレた、ヒネくれたキャラクタ作りが味のひとつだなあとも思うのですが。しかしまあ、憎めないと言い切れないくらい、ヒドさがイっちゃってます。
終盤の、さらに従僕までが裏切っちゃって、だれもかれもがロクでもなくて、だれもが正義でだれもが悪でありながらひとつのことを突き詰めていく冒険物語的な展開は、ある意味とても王道なテイストもしっかりあり、かなり面白く読めました。
謎解きそれ自体はレーベルのせいかどうか、ストレートなもので大仕掛けではなくて、以前のトリック使いを思えば物足りなさもなきにしも、でした。が、前述のキャラクタの立ち位置の変化や家族の物語としての側面で十二分に楽しめたので、私的には問題ないです。
その家族の物語としての描き方が、さりげなく暖かいというか、わざとらしく強調することなく滑り込ませていて、巧いなあと思えました。パンのやりとりや、引き出しから出てきた胡椒。さりげない小道具が効いてます。そして叙情的なラストシーンがとても美しく思えてきました。
……正直言って、「乙一小説」を読めたーっていう満足感でいっぱいなだけかもしれません。最近はあまり小説を出されてませんから…。ファン的に甘い感想かなとわれながら思います。
でも楽しかったのは本当です。
このヒネクレ具合が最高です。
……ただ、挿絵が怖かったです……。


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